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【正社員の初任給を上回る「最賃」という実態】

日本では10月1日から、最低賃金(最賃)がアップしました。

2021年を31円上回る961円。過去最高額の3.3%アップとなりました。
最も高い東京都は31円アップの1072円、続いて神奈川県の1071円となりました。

もちろん最賃は文字通り法律が設定した最低レベルの賃金であり、正社員・非正規に関係なく地域別最賃額以上の賃金を支払わなければ
法律違反となり、50万円以下の罰則が科されます。


【苦しい物価の上昇】
日本ではガソリンから食品まで広い分野で値上げラッシュが続いている。
しかし、それを上回る勢いで物価が上がり続けている。
8月の消費者物価指数は円安と原材料やエネルギー価格の高騰により前年同月比3.0%(総合)と、
消費税増税を除いて30年ぶりの上昇となりました。

一方、それに見合う賃金は上がっていない状況です。
賃上げも焼け石に水の状態だ。このまま放置すれば可処分所得が減少し、家計はますます苦しくなる。
正社員の賃金を非正規主体の法定最賃が徐々に追い上げているのだ。
また、「最低賃金は上回っているが、賃金を引き上げる」という企業も14%もあり、最賃アップの影響力が増しています。


【正社員の「初任給を上回る最賃」という実態】
もちろん最賃アップの影響を受ける社員の中には大企業の非正規社員も含まれているが、
正社員の中で最も影響を受けているのが高卒初任給です。
例えば東京都の最賃は1072円。単純に試算すると月額17万1520円(1072円×160時間)です。

2022年度の高卒初任給の平均は17万3032円。
企業規模別で見ると大企業では17万6269円、中堅企業(従業員300~999人)で17万1470円、
中小企業で17万2077円でした。
最賃が正社員の高卒初任給に肉薄していることがわかります。

そして今年の春闘の賃上げでは高卒初任給が最賃にも達していないことも明らかになりました。
大手電機メーカーで組織する電機連合が16万6903円、鉄鋼メーカーなどで組織する
基幹労連が16万6514円、電力会社で組織する電力総連が16万7400円です。
日本の基幹産業といわれる自動車産業で組織する自動車総連も16万5059円です。
自動車総連は2020年の春闘要求で初めて企業内最低賃金を「18歳16万4000円以上」とする労使協定方式を盛り込み、2022年も高卒初任給に準拠した「18歳16万8000円以上」での協定化を掲げました。
組合員の賃金アップに向けて率先して戦ってきた代表的な労組と言えます。春闘の取り組み方針では
地域別最賃を意識し「2022年頃には全国加重平均が1000円程度、
とりわけ東京・神奈川では1100円程度となることが見込まれる」と傘下の労働組合に発破をかけています。


【やがて大卒初任給にも迫る?】
政府は最賃については全国の加重平均1000円を目指しており、一昨年、今年と3%程度アップしました。それに対して春闘の正社員主体の賃上げ率2%程度です。
このままで推移すれば、高卒初任給どころか大学卒初任給や20代社員の給与も
いずれ最賃に迫るという、笑うに笑えない事態も起きかねない。
日本の賃上げはもはや行政主導の最賃アップにすがるしかない、という悲しい状態にあります。